本日、当社の賃貸管理物件の退室に伴う敷金精算業務で市内のある老夫婦宅に訪問した。
入居者の男性が数ヶ月の家賃を延滞したあげく行方不明になり、様々な諸事情により保証人でもない親御さんの老夫婦が損害金を支払うはめになった。老夫婦はぎりぎりの年金生活で過ごしており数十万円の立替金は家計を圧迫するのはゆうに想像できた。
いくら仕事とはいえ、このような業務はなるべく避けたいのが心情である。しかし不景気のせいであろうか、最近はこのての業務が増えてきたような気がする。
訪問先の老夫婦宅で原状回復に関するご説明をし本日、家主様への損害賠償金を集金させていただいた。年金暮らしの保証人でもない親御さんからだ。入居者のお父様が嘆いていた。しかしお支払いいただく段階で毅然とした態度でこうおっしゃた。「私が本来、契約に関係ないので支払拒否もできる。だけどあなたや大家さんに息子がご迷惑をかけたことは本当にお詫びする。ただ私は人間として支払う義務があると思うから全額支払うよ」 続けてお母様がおっしゃった。「本当にごめんなさいね。」
老夫婦宅を出たあと胸が痛んだ。心苦しかった。周りに迷惑をかけたご子息様は今頃どうしているのだろうか。老夫婦は言葉では息子を許していなかった。気持ち的にも許していないのかもしれない。
私にも4歳の息子がいる。今はパパ・パパとなつく年頃だし、からかいがいあって接していて、とてもかわいいさかりだ。この老夫婦にも我が子がいとおしくて、かわいくて夫婦二人してみつめていた時代があったと思う。そんな子供が成人し不祥事を起した時の悔しさと情けなさの気持ちは想像しただけでも心苦しい。
帰りに久米川駅の業者に立ち寄る為コインパーキングに駐車し業務を終え車庫より出発しようと思った矢先、たまりかねガマンしていた涙腺が緩んでしまった。一度緩んだ涙腺はなかなかおさまらず、20分位涙が止まらなかった。
事務所の到着すると我が息子が2歳の妹とキャッキャ!キャッキャと仲良くシャボン玉遊びをしていた。この子が成人したら、社会人として一人立ちしたら、結婚したら一人前の男として接しようと思っていたが、この想いは変わった。
愛する妻と二人でこの世に迎え入れてあげたいと願い、そしてその想いがかない、今、家族の心のふれあいという楽しさと親の成長という苦しさを体験させてくれている息子。私は自分が生きているかぎり、この子に対して親としての責任があるのだと実感した。
そんな事を思いながら事務所のドアを開けようとした瞬間、遠くより純真な声で妹の名前を呼ぶ息子の声をかすかに聞きながら事務所のドアを開けると仕事に情熱を傾けているいつもの自分に戻っているのが実感できた。